150.無職になって、新年度を迎えることについて。
ついに私は、国会議事堂勤務を終了させて、無職になった。あの門を出たらもう戻れないんだ、と思いながら門に向かって歩いた。
門を出たら私は国会議事堂にとって部外者となった。議事堂を囲む塀の上には、それを乗り越えるのを防ぐための電線がある。部外者にとって、議事堂は入るに入れぬ要塞のような場所になる。
その次の土曜日に、中央官僚の新人歓迎会に行った。皮肉にも、4月1日に無職になる私が、同日に官僚となる人々といろいろ話すことになってしまった。随分情けない気分になってしまったものだ。
これから私は、1ヶ月ほど身辺整理や休養をしてから、再びアルバイトを探して収入を得つつ、最後の一連の公務員試験に挑戦することになる。さらに、いろいろな政治勉強会やイベントに参加して、政治の知識や経験を積むことになる。もし公務員になれなかった場合は、政党に入り、政治関係の仕事に就くことを考えている。
このメールマガジン「世の中の片隅から」は、時事ネタを簡潔な文章で発表するメルマガとして発行し続ける予定である。議事堂からの現場ネタはなくなるが、議事堂勤務の人間として今まで立場的に書けなかったことや、評論みたいなものも書いてみようと思う。
年度が変わり、生活が一変したかたがたも多いと思う。新たにこのメルマガを読んでくださる皆様。これからよろしくお願いします。
151.私にとっての政治勉強会・政治集会について。
国会議事堂を去り、無職となった私だが、事情が許す限り、政治集会や勉強会には極力参加したいと思う。そして、その報告や評論をこのメールマガジン「世の中の片隅から」で書いていきたい。
私は1999年の統一地方選挙の選挙期間中に選挙事務所に入って以来、政治に関する集会や勉強会に参加し続けてきた。公職に就きたいという希望があるので、特定の政党に加入することはせず、政治は社会勉強や情報収集として、政治とつきあうことにしている。
政治勉強会としては、「松下政経塾」とか「一新塾」とかが有名だが、現在私は、田中秀征先生の「民権塾」と、尾崎咢堂先生の「咢堂塾」に入っている。いずれも、議員になるための予備校ではなく、政治啓蒙のための生涯学習の授業のようなものである。
政治集会は、勉強会やメールマガジンで知り合ったもので、自分の負担にならないものを参加している。しかし、イベント告知に力を入れている政党に偏っているような気がする。これを書いている今現在も、「BSE緊急措置法案の早期成立をめざす国民集会」なんかに参加している。公安にマークされないように気をつけながら。
でも、政治集会や勉強会での政治と、国会議事堂の中の政治とは、「主張が飛び交う派手な政治」と「ルーチンワークを重ねる地味な政治」というような、微妙な違いがある。それに留意しようと思う。
152.横浜市長選における青葉区の得票について。
京都知事選が政党相乗り候補の圧勝で終わったことを考えても、横浜市長選で政党が相乗りした現職候補が新人候補に敗れたことは奇跡のようなものだったと思われる。それも、新人候補には不利といわれる低投票率(39.35%)での新人候補の勝利であった。
新人候補の中田宏氏は、横浜市青葉区・川崎市宮前区で2度大量得票をあげた衆議院議員である。今回の横浜市長選で、中田氏が青葉区から得た票は59219票である(青葉区での投票率は41.63%)。何と、2000年の衆議院選挙で、中田氏が青葉区から得た票は60566票である(投票率62.43%)。投票率に比べて得票数がほとんど変わらない。ちなみに横浜市長選での現職候補の青葉区での得票は18299票であり、衆院選で中田氏の次点だった人の青葉区での得票は31012票であった。
中田氏の青葉区での圧倒的な強さは、農村部の大物自民党議員もかくや、といった感じである。投票率が下がっても得票数が減らないということは、彼の票は「組織票」というわけで、無党派票は彼の対立候補に行くか棄権していたのである。野党色が強く、利権を持ち帰りにくいであろう中田氏についた「組織票」は、最大限にほめると、政党を転々として日本最長の議員生活を全うした、憲政の神様尾崎行雄を支えた「組織票」に似ているところがある。
153.早稲田大学「大隈塾」シンポジウムの感想について。
4月15日に作者読者は、早稲田大学の大隈講堂で行われた「早稲田大学『大隈塾』発足記念シンポジウム」を聴講した。私はこのシンポジウムの存在を今年2月4日の読売新聞で知り、開催日時場所などの細かいことは早稲田大学のホームページで調べた。
私は早稲田大学の学生でもないし、OBでもないが、私でもこのシンポジウムに参加できたということは、このシンポジウムが一般人にも広く公開されていたこと、そして興味のある人々に対し情報公開がされていたということだと思う。高く評価できることである。
立派なパネリストと討論できる権利を持つのが事前に選抜された人々だけというのが残念だが、まあ仕方あるまい。しかし、誰に、どのような方法で選抜されたのか、その選抜は絶対的なのか、という議論はできよう。選抜を担当した教授陣を疑って、自分の意見を彼らにぶつけた質問者がいたが、正しい方向だと思う。
こういうシンポジウムで是非リクエストしたいことがある。シンポジウムが終わったあとの「反省会」を公開してほしい。主催者・パネリスト達による、このシンポジウムの何が収穫で、何が課題か、次に向かって改善すべきこと、できることは何か、といった「反省」を何らかの形で公開してくれると、受講者がシンポジウムを本当に共有した気持ちになり、次回にベストの状態で臨めるはずだ。
154.政官関係改革案に対する作者読者のコメントについて。
田中秀征先生の「民権塾」で、3月13日国家戦略本部発の政官関係改革案についての論文を書けという課題が来ている。しかし、塾生の論文をまとめて統一論文を作るということなので、私は自前の論文は書かずに、このコラムで軽く展望を書いてみようと思う。
結局4月17日の国家戦略本部の会合で、この政官関係改革案は棚上げになってしまった。首相主導で作った自民党の機関である国家戦略本部の改革案が自民党の一部勢力によって潰された形になる。
この改革案に全面的に賛成する立場の人々にとっては、改革案に反対する勢力を政策決定の場から退場させる手段を考えて実行したほうが、この改革案自体を論じることよりも大事になるだろう。
今回の改革案は現在現実の政治状況からかけ離れたある種理想的なものであったため、反対する勢力に有力な反対理由をもたらした。
なんとか政治改革の結果を出すために、国家戦略本部は反対勢力の意見を飲んだ折衷案を出すことが考えられる。評判は悪いだろうが、時間をかけて改革する構えの小泉首相の得意技である。
私としては、民主主義に則した政官関係改革案が出るのを待ちつつ、やることの第一はこの改革案を実現する政治権力を育てることだと思う。改革案に一般人の視点を付加するのは重要だが、残念ながら一般人は詳しい政治を知らない。これはやることの第二である。
155.これから2ヶ月間の国会審議について。
現在開会中の通常国会は6月19日までであり、あと2ヶ月を切った。今国会の内閣提出法案は約90件で、開会当初から出されていた予算関連法案は成立しているが、3月あたりに出された予算関連法案やその他の法案は審議中であるか、未だ審議に入っていない。
そして、議員提出法案が50件ほど提出される見込みなのであるが、一部を除いては審議未了で廃案となる可能性が高い。内閣提出法案の審議だけで国会は手一杯になってしまうのがその主な原因である。特に野党議員発案の法案は全部審議未了廃案になってしまうかもしれない。本会議で否決される野党法案は健闘したほうで、大体は議院運営委員会で店ざらしになって審議されずに終わる。
未だ成立していない内閣提出法案の中には、皆様お馴染みの有事法制3案、メディア規制3案などの重要法案が含まれる。後者は内閣委員会で審議されるが、委員長が野党が占めるので波乱が予想される。小泉改革関係法案は、道路公団改革法案が審議中で、郵政改革法案は未だ提出されていない。多難の路を歩み続けている。
重要法案はどの法案も会期末までの審議となるだろう。となると会期末は本会議ラッシュとなり、どさくさまぎれに全法案強行突破なんてことも考えられる。小泉改革法案や夫婦別姓法案など、与野党が割れそうな法案もある。国会審議から目が離せない。
156.春の5大選挙の終わった月曜日の提言について。
横浜・京都・和歌山・新潟・徳島の春の5大選挙が終わった。総選挙ではない単発選挙に強かった与党が、意外に勝てなかった。
市長選・知事選では、山口市などを含め、与野党相乗り候補が敗れることが目立った。強力な権限を持つ首長に与野党が相乗りして共に利権をいただくというのが地方政治の構造であるから、与野党相乗り首長候補の落選は地方政治の構造をすぐに激変させた。
しかし、国政選挙に関して言えば、与党は参議院の1議席を失っただけである。自民党は先日坂野元自治大臣の死去で同じ1議席を失っている。明日から与野党の議席が逆転するわけではない。地方の場合とは違って、政治構造が激変するというわけではないのだ。
与党が、小泉首相が、人々に見限られた、というのはそうかもしれないけれど、証明できない。衆参両院で与野党の勢力が逆転しないと、それは証明できない。これは国政のルールである。
従って、月曜日からの国政になんらの変化もおきない。たとえ内閣支持率や株価がゼロになったとしても。でも、こういうルールだか何だかが、人々の政治不信を深める最大のものかもしれない。
そこで作者読者の提言。議院の解散権を首相のほかに国民にもほしい。いろいろ問題があるが、例えば4ヶ月に1度の国民投票の10分の1とか。今日に限っては、皆様賛成してくれるはずである。