10.加藤内閣の閣僚・党三役の予想について。
 2000年12月に、森総理大臣は「21世紀に向けて人身一新、総力内閣で新世紀を迎える」と発表して、政権を加藤紘一氏に禅譲する事を表明、加藤内閣が発足した。併せて自民党の新三役人事が行われた。省庁再編後初の内閣には興味深い顔ぶれが出揃った。
 別名「YKK内閣」。山崎拓元政調会長が防衛庁長官、小泉純一郎元厚生大臣が外務大臣に就任し、彼らの結束力で2001年の政局を乗り切る心構えだ。
 2001年度予算の編成に向かう財務大臣は谷垣禎一元金融再生委員長、経済産業大臣は堺屋太一氏が留任、金融再生委員長には額賀福志郎元防衛庁長官が就任する。
 新省庁には大物が続々と入閣。国土交通大臣には亀井静香政調会長が就任、辣腕を振るう。文部科学大臣には保守党の扇千景建設大臣、厚生労働大臣には公明党の坂口力政審会長が入閣。省に格上げされた環境省の初代大臣には村上誠一郎自民党副幹事長が初入閣。野中広務幹事長の入閣が噂された総務省には西田司自治大臣が就任した。
 内閣の要である内閣官房長官には堀内光雄元通産大臣が就任。農林水産大臣は谷洋一氏が留任。法務大臣には参議院議員の鹿熊安正氏が初入閣した。
 党三役は、幹事長には村岡兼造元内閣官房長官、総務会長には小里貞利氏が留任、政調会長には尾身幸次元経済企画庁長官が、それぞれ就任した。
 今度の加藤内閣は自公保体制の枠組みや派閥の勢力を考慮しつつ、予算・重要法案の審議、さらに7月の参院選を見据えた布陣となった。加藤新首相はYKKや加藤派を頼りに、森内閣を支えた亀井氏・扇氏らや今回無役となった野中幹事長と近い西田氏・尾身氏らと微妙なバランスを取りながらの政権の舵取りとなりそうだ。


11.11月からの政局について。
 前のコラムがみんごと不評だったのでその反省を込めてこれからの政局について。臨時国会は若干の法案と補正予算を審議して12月1日に会期末。12月には省庁再編があって内閣改造がある。翌年1月から通常国会で、2001年度予算審議。
 補正予算・2001年度予算の骨子は既にできているので、予算関係大臣は12月の内閣改造では普通交代できない(1996年1月に村山内閣から橋本内閣に交代、村山総理・武村大蔵大臣は「敵前逃亡」と揶揄される)。従って、宮沢財務大臣・堺屋経済産業大臣は留任であろう。そして、現在検討されている予算案の内容に、加藤紘一元幹事長は反対しているから、この時点で加藤氏の経済関係官僚での入閣はないわけである。
 ということは、通常国会で施政方針演説を行う4閣僚(従前は首相・蔵相・外相・経企庁長官)の交代はない、と見た方が良さそうである。森総理の12月退陣はない。あるとしたら予算成立後の4月であろう。
 12月の内閣改造は施政方針演説4閣僚の留任、現内閣の枠組み重視が基本である。一部では坂口力氏(公明党、厚生労働大臣での入閣か)、片山虎之助氏(参院自民、非拘束名簿式参議院選挙制度の発案者として多くの答弁をこなした)、額賀福志郎氏(橋本派、「滞貨一掃」内閣への入閣を見送ったという話がある)らの入閣が取り沙汰されている。加藤氏・山崎拓元政調会長は主張の違いによって入閣しないが、予算成立後はどうなるかわからない。12月の内閣改造は、副大臣を含め、ほとんど異動はないのではないか。
 野中氏の幹事長辞任があると、少し状況が変わるかも知れないが、政変は4月と見てもう少し粘るのではないか。亀井政調会長の動きにも注目。


12.問題を当事者同士で解決することについて。
 今回は、介護保険で有名になった某市の市長から伺った話から示唆を得た。
 例えば、市が工場を誘致しようという政策を市民に提案する。本当は市の一存で工場を誘致することもできそうだが、市は住民自治の原則に則る。市民の中には、振興策として良いとか法人税が市に入って財政が良くなるとかの理由で賛成する人々もいれば、環境に与える影響が心配とか人の流入により治安が悪化するかも知れないとかの理由で反対する人々もいる。大層に言うと市民の中に賛成派と反対派ができる。問題は市と賛成派と反対派とその他の市民が工場誘致という政策をどう処理するかというところである。
 賛成派は市に「反対派を何とかして、工場を誘致してくれ」と請願し、反対派は市に「賛成派を何とかして、工場誘致政策を撤回してくれ」と請願する。市は正反対の請願を調整する役回りを行う一方、賛成派反対派同士は解決を市に依存してお互いで交渉して解決しようとはしない。お互いでやることは喧嘩ばかりである。住民自治の原則を徹底するのなら、市民の意見が割れたときは市民同士の調整・交渉で極力解決する、お互い解決のために努力しても解決しなかった場合に市にゆだねる、というスタイルでやっていかねばならないのではあるまいか。
 一般化する。人々は、意見が割れる問題に直面したとき、当事者同士自身で解決しようとせず、「御上」に解決を任せてしまうことが多い。国民主権・住民自治を実践するにおいて大きな課題であると思う。人々の主権自治意識の欠如と、大げさに言えるのだろうか。
 例えば、元従軍慰安婦が直接旧軍関係者に慰謝を求めた、という話を私は寡聞にして聞かない。なぜか現体制の政府が介在する羽目になっている。


13.小沢一郎氏の「普通の国」への諸政策の利用について
 北岡伸一先生の『普通の国へ』(雑誌論文集成、2000.7発行)のまえがきから引用する。「新進党結党以来、その事実上のリーダーであった小沢一郎自由党党首は、2000年6月の衆議院選挙で、生き残りをかけた戦いに直面している。(原文改行)それにもかかわらず、小沢氏が打ち出した『普通の国』という方向は、徐々にではあるが実現されつつある」。
 小沢氏の「普通の国」への諸政策は、小沢氏と直接関係のないところで利用され、実現されていったのというのが、最近の政治であった。そして、小沢氏の「普通の国」への諸政策で実現されていないものも残っている一方、それに代わる画期的なビジョンと諸政策を持って出てくる政治家がいないような気がする。だから、次期総理大臣に小沢一郎氏を挙げて、彼が「普通の国」への諸政策を完成させることを期待する人々が多いのであろう。
 小沢氏の「普通の国」への諸政策に反対する人も多い。しかしそれは、政策自身に反対するよりも、政策を運営している人々の思想・信念を信用できないという反対のほうが多いような気がする。例えば、岸信介首相は元A級戦犯・戦前体制下で利益を享受してきた人だから、彼の運用する日米安保条約は反対である。今の日本の官僚は腐敗しておりかつ政官癒着が甚だしくかつ反民主的であるから、彼らの運用する組織犯罪防止法には反対である。政策そのものには反対していないことに注意すべきである。
 つまり、大体の人は、運用する人が間違いを起こすような人ではなかったら、小沢氏の「普通の国」への諸政策そのものには賛成のはずである。民主党の鳩山由起夫代表が小沢氏の「普通の国」への諸政策の利用・実現を目指すようである。これによって、鳩山氏を「無色透明」から「運用すると間違いを起こす人」に人物評価を変えては変である。


14.若者が政治に参加することの種々について。
 11月15日に「若者の政治参加をめざして」という選挙権年齢の引き下げを求めるシンポジウムに行った。あるいは、「小沢一郎政治塾」が「責任感を持った若い人材が必要」として、20才以上35才以下の人材を募集している。自分って若いけど、政治に興味を持っているし、政治家を目指すか、という人がこれから増えそうである。
 少子高齢化社会における累積債務や年金制度、あるいは有事の際の勤労奉仕など、若者にかかる期待や責務がますます増加していくと、若者の意見が世の中のキャスティング・ヴォートを握る可能性が高い。恐らく早い段階で選挙権年齢の引き下げが行われるだろう(これに関する法案は今国会の時点で民主党から既に出ている)。しかし、若者に政治教育が充分行われていない、一部の若者は社会経験を持たないから政治が理解できないのではないか、(前出のシンポジウムではさすが、着メロが鳴らなかった)若者は自分の尊厳を守るための最低限の礼儀を守れるか、とかの諸問題が残るであろう。私としては、所得税控除を受けている人は何才でも選挙権付与、しかし所得税を払っていない人は23才まで選挙権はお預け、というアイデアがある。制限選挙になって憲法に抵触するが。
 「小沢一郎政治塾」の入塾用件の中に、10万円程度かかる年2回の合宿費用を含め各研修の費用は自己負担、2通の入塾推薦書を申し込み時に提出、という若者にとって厳しいものがある。卒業までの2年間で概算60万円かかる。若者を推薦する労を執る自由党に好意的で自由党が認めるステータスの人が2人集まるだろうか。官僚予備軍の有力帝大卒の坊ちゃん嬢ちゃんが該当するのかな(申込書をもらっといて何を、と言われそう)。
 若者が世論を動かすことはできそうだが、世論を集約することはまだ先のようである。


2000年11月へ    ホームへ