メールマガジン「世の中の片隅から」最新版
293.1冊の本から戦前の生活を考えることについて。皆様に、1冊の本を紹介する。『君たちはどう生きるか』吉野源三
郎著、岩波文庫。中学2年生の「コペル君」がいろいろな体験をし、
その体験を聴いた「叔父さん」が、「君たちはどう生きるか」をコペ
ル君に諭す、という内容である。特筆すべき点はその刊行年で、19
37年、戦前であり、日中戦争が始まろうとする年である。
あるいは皆様の中には、「戦前の暮らし」がどういうものだか、見
当がつかないかたもいるのではないか。「火垂るの墓」で、戦前の軍
人の家の生活が「案外戦後的」だと思ったかたも多いのではないか。
『君たちはどう生きるか』でも、戦前の子供の生活が記されている。
今と似たところもあり、決定的に違うところもある。
例えば、「野球」といえば今はプロ野球、あるいはメジャーリーグ
であろうが、戦前、「野球」といえば大学野球、とりわけ「早慶戦」
であった。そういえば今年、「最後の早慶戦」という映画が上映され
ている。しかしながら『君たちはどう生きるか』の前半は、さながら
『三丁目の夕日』とそれほど変わらないように見える。
しかし、「愛校心のないものは非国民、制裁を加える」となり、今
まで「戦後風」だったコペル君と友達に、一気に「戦前」が襲い掛か
ってくる。上級生という「戦前」に敢然と立ち向かうコペル君たち。
1937年である。よくこの内容の文章が世に出たものだ。